猫の目ギラギラリン

アニメソング(アニソン)、アニカラが大好物で漫画・アニメも好物という死んでも治らないと思われるヲタ属性。他に社会で起こってることや民俗っぽいことや懐かしいことや動物・自然などにも興味を持つには持っているビミョーな匙加減なり。

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観た映画2本

 レンタルショップでDVDを借りてきて観ました。1本は超駄作だったので書きません。(^^;

・生きる(黒澤明監督)
 まともに黒澤監督の作品を観たことないので試しに観てみました。さすがに巨匠と言われるだけのことはあります。昭和27年の作品でもう50年以上経っているのですが面白し感動します。(^^)


 主人公の渡辺はとある市役所の30年勤続の市民課課長、何もしないことが仕事。生きていても生きていない状態の渡辺は体の具合が悪く病院を訪れ、医師からは軽度の「胃潰瘍」と言われますが、その症状から「胃ガン」と自分で判断します。その頃は本人に告知するってことは無かったのかもしれません(今でも少ないかもしれませんが)。そしてガンに罹れば初期末期を問わず死亡率もかなり高かったと思います。そんな当時の状況がこの映画でわかります。

 自分の「生きる」時間があとわずかであることを知った渡辺は自分の貯金5万(当時、6,70万で家が建ったようです)を持ち出して今までやったことも無かった酒や女遊びなどに耽ります。息子夫婦も考えているのは親のことでなく親の財産のこと、とても自分の病状を話せる状況ではありません。市役所を辞める若い女性に思いを寄せ、度々食事などに誘います。その中で彼女の明るさや優しさを感じながら、自分の「生きる」力、その輝きを取り戻します。周囲の誕生会で歌われている「ハッピーバースデイ」の歌を聴きながら一人階段を降りて行く渡辺の姿が強烈に印象に残りました。あの時が渡辺の生きようとする心の「誕生」の瞬間でした。

 その後地域住民から陳情のあった公園を作るために無我夢中で形振り構わず取り組みます。苦労した末に出来上がったその公園のブランコに乗って、「命短し恋せよ乙女」と『ゴンドラの唄』を楽しそうに歌い、充実感に満ちた顔を見せた雪の夜にその場で渡辺は亡くなります。生きようとする心の誕生からたったの5ヶ月間でしたが、渡辺にとっては生きた証を最後の最後に残せました。上手くはないけど低い声で途切れ途切れ『ゴンドラの唄』を歌う志村喬さん(昔榮太楼のCMにも出ていたかな)の声は心臓に深く突き刺さりましたね。

 その後渡辺の葬式で見せた市役所職員の冷たい態度と上辺だけの軽々しい言葉、保身、縦社会の構造・・・何と空しいことか。その中で一人だけ渡辺の心のうちを汲んでいる同僚がいました。でも多勢に無勢、それは昔も今も変わりなく。渡辺の遺影の前でみんなで円陣組んで頑張ろうみたいな事を言っていたのに、市役所に戻れば以前の渡辺と同じ、生きていても生きていない職員の巣窟で相変わらず市民をたらい回しです。腐ったみかんは隣り合うみかんに腐敗を移します。でも、一人でも渡辺の最後の輝きをわかる職員がいれば雰囲気をを変えられる日がいつの日か来るかもしれません。最後一人の同僚が橋の上に立つシーンはそんな明るい未来を見せてくれた感じがします。


 志村さんのお顔は決して美形ではないけど、今の役者さんには少ない物凄い存在感を持つ役者さんです。その一挙手一投足に私も引き込まれてしまいました。あ、食い付かれそうな大きい目の玉も印象深かった(笑)。黒澤監督は一人の人間を通して社会を鋭く見据えてるんですよね、いやぁ凄いわ。(^^) 

 それから私ならでは、言葉にちょっと注意していたんだけど、昭和27年当時で「ムッツリスケベ」「自動販売機」「DPE」「スケートリンク」などが出て来ました。「ムッツリスケベ」って言葉、いつ出来たんでしょうね、気になるなぁー。(^^;

 次に『七人の侍』を借りたかったんだけど他の人に借りられていました。(^^;

生きる [DVD]

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シンドラーのリストスティーヴン・スピルバーグ監督)
 生きていない自分がこの映画を観るとすごい刺激を受けます。人間はあそこまで冷酷無比になれるのか。アニメの残酷シーンなど比ではないです。心臓の弱い方は見ないほうが良いでしょうね。でもそれがホンの60年ぐらい前にドイツで起こった大虐殺だったということ、これが現実。

 人が目の前で死ぬことが日常的だと心も麻痺してしまいます。あの異常の中の日常で、果たして自分が鉤十字を付けた一軍人だったら、一市民だったら、そして虐殺された側の人間だったらどんな行動ができたろうか。軍人ならゲートみたく何かの苗を間引くように人間を易々と撃ち殺しただろうか、物欲に負けて裏取引をしただろうか。市民なら列車の窓から見えたこどものように首を切られるポーズをして虐げられる人間を侮蔑したろうか、それとも知り合いのおばあさんを匿った少年のように勇気を奮えただろうか。そして虐げられる側の人間なら抵抗した上で体を銃で射抜かれただろうか、無抵抗のまま連行され裸にされて殺され無数の屍と焼かれて灰になったろうか。わからない、その時になってみないとわからない。でも、人殺しをしたくはないし無駄死にもしたくない、我がままかもしれないけど。

 杉原千畝と違ってシンドラーは実業家でした。また、真面目というわけでもありません。お金と権力を武器にして人を丸め込んで行くそんな人です。2人がやって来た経過は違うかもしれません。が、放っておいたら死ぬ行くはずだった人々を多く救った結果の点では同じです。極端に少なくなってしまった種は2人のお陰もあって芽が出て現在では世界のあちこちで多くの花を咲かせています。

 シンドラーの工場で働き生き延びた人はホンの一握り、間違って収容所に送られた女性達はその後シンドラーによって救い出されますが、これから確実な死を迎える多くの人たちが金網を隔てて彼女達の横を歩いていたこと、正に生と死の線引きでした。シンドラーも杉原もそれ以上の人を救い出せなかったことを嘆きます。死の淵にいた人々を助けた2人が罪悪感を感じる、もっともっと罪悪感を感じなければいけない人が山ほどいるのにも関わらず。不条理な世界、それが戦争。

 
 シンドラーと関わった方のインタビューのフィルムも合わせると4時間以上この映画を見ていたのかな。長かったけど全然飽きませんでしたね。そのぐらい衝撃的で心に容赦なく染み入るシーンの連続でした。インタビューは本編以上に良かった。実際に関わった人の話を聞けることはとても重要で貴重なことです。映画ができてから既に10年経っているので、中には他界されているかたがいるかもしれません。経験者の生の声を聴くこと、それは間違った考えを持つ者にもう一度考え直させる効果もあります。戦争であれ何であれ二度とこんな惨たらしい出来事が起こらぬよう願います。